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伊都工平 公式blog

ここはライトノベル作家・伊都工平が、その場の思いつきをいろいろメモったりするブログです。

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最新作「犯人は夜須礼ありす
MF文庫Jさまより好評発売中です。

拡大します

ある日、突然殺人犯となってしまったクラスメイトと、
彼女をかくまうことになった少年のお話です。
からのドタバタ美少女同居ラブコメ。
あと没落生徒会長大暴れ。

夜須礼ありすの不可解な事件を、
悠木葦人と山咲片理のコンビが解き明かします。

冬休みのおともとして、手に取っていただけたら。


≪目次≫

第一話『殺人とは何か?』
 序章  夏至の殺人
 第一章 夜須礼ありすという人間
 第二章 許せないこと
 第三章 今はまだ本当だった


第二話『友とは何か?』
 第四章 ワイヤースケイプ
 第五章 消えていくもの
 第六章 罪と罰と幻惑
 第七章 全ての片理


第三話『人はなぜ、人を殺してはならないのか?』
 第八章 勇気がなさねばならないこと
 第九章 アルカ奪還作戦
 第十章 3つの真実
 終章  君を守るためにできること

なお以下の店舗さんでは、イラストを担当していただいた『ろんど』氏による
描きおろし特典がつくそうです。
こちらもぜひチェックしてみてください。

ゲーマーズ:オリジナルブロマイド
とらのあな:しおり

より自由な章設計

 今回のこの『書き方』はゼロスタートを前提にしていますが、もう少し具体的に作品イメージを持っている場合は章の立て方を変えるべきですので、その方法を書いてみたいと思います。

 
○イメージボード作り
 まず頭の中にある『こういう感じが実現されるから面白い』というのを、一旦思いつくままに書きだしてみてください(紙の上に走り書きするぐらいの感じで構いません)。
 次に、そのイメージボードに書きこんだ各要素が、本の中で何回繰り返されることなのか? 一冊、一話、一章の、どの構造を埋める要素なのか? を確認します。
 例えば『巨悪を倒す』なら一冊丸々使うでしょうし、『仲間が集う』なら各話ごとに一人ずつ仲間が増える話が――3つくらいほしいかもしれません。『徹底的にラブコメをやる』なら、毎章ごとにその展開を出した方がいいと思います。
 全てを具体的にする必要はありませんが、イメージを実現すると何話何章の構成になるかを割り出してください。

 
○予想ページ数の計算
 全体の構成が決まったら、予想ページ数を仮計算します。
 一本の起承転結につき8pかかる前提で、計算してみてください(参考:文庫本一冊分のページイメージ)。
 もちろん、1つの要素を実現するのに起承転結が二本以上必要な場合もありますので、そのあたりも注意しましょう。
 単純な繰り返し展開だとして、ザッとこんな式になります。
  (一冊単位での起承転結の数+一話単位での起承転結の数×話数+一章単位での起承転結の数×章数)×8p=?
 

○要素の調整
 計算してみたページ数が完成目標ページ数の70%を越えていたら、要素が多すぎます。
 イメージボードに戻り、あなたが書きたい本の『面白さ』にとって、重要度が低い要素から切っていきましょう。(意外に面白さと直結しない、ただのつじつま合わせでページを浪費しようとしていたりするものです)
 もしくは話数や章数を減らすことを検討してみてください。
 
 いきなりちょっと大変ですが、ここで折り合いがつかないと結局、完成してから削ることになります。
 この『完成してからの削除』は、道連れ的に不完全な起承転結を大量発生させ、作品のクオリティに大打撃を与えますので、この時点で絞りこんでおいてください。
 要素を減らして魅力が減った分は「残した要素のネタクオリティーでカバーする!」ぐらいのつもりで、どんどん刈りこんでいきましょう。

 
○イメージボードの再構築
 折り合いがついたら、削った要素が存在しない状態で、再びイメージボードを書いてみます。
 それでも面白さは損なわれていない、ということになれば調整は完了です。

 各話レベルまでの起承転結展開のうち、まだ未定のものを出します。
 最後にそれをストーリー順にまとめたものが、その作品のプロットということになります。

全体作業の進め方(通常伏線と逆行伏線の張り方)

 ここで紹介している書き方は、『作業範囲の限定』と『後回し』により、集中力アップと作業スピードの向上、アイデアのクオリティアップを目指しています。
 例えば、第一話執筆中に第二話のいいアイデアを思いつく場合がありますが、今できない作業について考えても仕方がありません。今できないことはどんどんメモを取って後回しにし、目の前の作業だけをこなしすことに集中します。
 その作業を混乱せずに行なう具体的な方法を、以下に説明します。

 
○テキスト構造の作り方
 まず『章の立て方』までが終わった段階で、今後の作業スケジュールに合わせて、以下のような項目をテキストファイル上に作ります。


◎第一話執筆
◎第一話推敲作業一回目
◎第一話推敲作業二回目
◎第二話執筆
◎第二話推敲作業一回目
◎第二話推敲作業二回目
◎第三話執筆
◎第三話推敲作業一回目
◎第三話推敲作業二回目
◎全体推敲一回目
◎全体推敲二回目
◎印刷見直し
 
 ここに、もうすでにあるプロットを各話ごとに分割して配置します。
 そして『実際の執筆』に書いた手順で、まずは章ごとの起承転結を出し、文章繋ぎの作業までを行なっていきます。


○作業の進め方
 『第一話執筆』の作業中に出た課題は、『第一話推敲作業一回目』にどんどん書きこんでください。順序を気にする必要はありません。書きこんだら、あとは頭の中から追い出します。
 もしもいま作業を行なっている第一話についてではなく、第二話や第三話に関する新たな課題やいいアイデアを思いついた場合は、『第二話執筆』の項目、『第三話執筆』の項目に書きこんでください。そしてこれらも同様に、頭の中から追い出します。


[第一話執筆開始時点]
◎第一話執筆
   <最初に作ったプロットの第一話分を配置
◎第一話推敲作業一回目
   <第一話執筆作業中に出てきた第一話課題をここに追加
◎第一話推敲作業二回目
◎第二話執筆
   <第一話執筆作業中に出てきた第二話課題をここに追加
   <最初に作ったプロットの第二話分を配置
◎第二話推敲作業一回目
◎第二話推敲作業二回目
◎第三話執筆
   <第一話執筆作業中に出てきた第三話課題をここに追加
   <最初に作ったプロットの第三話分を配置
◎第三話推敲作業一回目
◎第三話推敲作業二回目
◎全体推敲一回目
◎全体推敲二回目
◎印刷見直し


 この作業中、ある出来事について一冊全体に影響の出るような、一連の伏線を思いついたとします。
 その場合は、第一話の範囲については作業中に処理するか『第一話推敲作業一回目』に必要な作業をメモしてください。
 第二話分、第三話分はアイデアの時と同じように、『第二話執筆』『第三話執筆』の項目にそれぞれ必要な情報を書きこみます。
 通常の伏線は、このようにして実現できます。

 作業を進めていき『第一話執筆』がクリアできたら、完成した本文は『第一話推敲作業一回目』の項目に移動します。そして空っぽになった『第一話執筆』の項目を消去してください。

 作業は引き続き、『推敲の進め方』に従って行なっていきます。
 これも完了(2周分)したら、完成した第一話本文と、解決しきれなかった第一話課題は『全体推敲一回目』にまとめて移動します。そして第一話に関する項目は全て消去してください。
 以降、第一話のことは頭から完全に追い出し、独立した話として第二話の作業に移っていきます。
 第一話の作業中に出た課題をクリアし、修正を反映してから、第二話本文の執筆に取りかかってください。

○逆行作業の実現の仕方
 先ほど『伏線はこのようにして実現できる』と書きましたが、実際は伏線は『結論ありき』のもので、文章の後ろから前に向かってデータを配置していく、という順序で作ることになる場合がほとんどです。
 
 そこで例えば、『第二話執筆』の終盤まぎわで、第一話に張りたい伏線を思いついたとします。
 この場合、通常ならば、該当箇所までテキストを遡り、すでに完成している文章を崩しながら目的の情報をねじ込む作業を行なうことになります。
 しかしこれは意外に厄介な作業で、目的の数行をねじ込めばお終いではなく、周囲の文章とのバランスがとれているかも考えねばならず、判断し実行するのに意外と時間がかかります。
 そうなると今度は第二話の執筆に対する集中力が途切れ、作業が停滞していくことになります。
 
 そこで、こういった物語を遡る逆行作業は、アイデアや指示だけメモして『全体推敲一回目』に全て放りこみ、やったことにしてしまいます。
 

[第二話執筆開始時点]
◎第二話執筆
   <第一話執筆作業中に出てきた第二話課題
   <最初に作ったプロットの第二話分を配置

◎第二話推敲作業一回目
   <第二話執筆作業中に出てきた第二話課題をここに追加
◎第二話推敲作業二回目
◎第三話執筆
   <第二話執筆作業中に出てきた第三話課題をここに追加
   <第一話執筆作業中に出てきた第三話課題
   <最初に作ったプロットの第三話分を配置

◎第三話推敲作業一回目
◎第三話推敲作業二回目
◎全体推敲一回目
   <第二話執筆作業中に出てきた第一話課題をここに追加(逆行作業)
   <第一話推敲終了までに解決できなかった第一話課題
   <完成した第一話を配置
◎全体推敲二回目
◎印刷見直し


 第二話作業中はあくまで第二話だけの作業を行ない、完成させてしまいます。
 第三話も同様に、あくまで独立したものとして完成させてしまいます。


[第三話執筆開始時点]
◎第三話執筆
   <第二話執筆作業中に出てきた第三話課題
   <第一話執筆作業中に出てきた第三話課題
   <最初に作ったプロットの第三話分を配置

◎第三話推敲作業一回目
   <第三話執筆作業中に出てきた第三話課題をここに追加
◎第三話推敲作業二回目
◎全体推敲一回目
   <第三話執筆作業中に出てきた第二話課題をここに追加(逆行作業)
   <第三話執筆作業中に出てきた第一話課題をここに追加(逆行作業)
   <第二話推敲終了までに解決できなかった第二話課題
   <第二話執筆作業中に出てきた第一話課題(逆行作業)
   <第一話推敲終了までに解決できなかった第一話課題
   <完成した第一話を配置
   <完成した第二話を配置
◎全体推敲二回目
◎印刷見直し


 本文が第三話まで全て完成した段階で、『全体推敲一回目』に積んできた、これまでの課題をまとめて解決します。


[全体推敲開始時点]
◎全体推敲一回目
   <第三話推敲終了までに解決できなかった第三話課題
   <第三話執筆作業中に出てきた第二話課題(逆行作業)
   <第三話執筆作業中に出てきた第一話課題(逆行作業)
   <第二話推敲終了までに解決できなかった第二話課題
   <第二話執筆作業中に出てきた第一話課題(逆行作業)
   <第一話推敲終了までに解決できなかった第一話課題
   <完成した第一話を配置
   <完成した第二話を配置
   <完成した第三話を配置
◎全体推敲二回目
   <全体推敲一回目作業中に出てきた課題をここに追加
◎印刷見直し


 この課題については最初に出してからずいぶん時間がたっていますし、また本文全体が書きあがって内容が確定していますので、それほど苦労せず解決アイデアを出せると思います。
 また逆に、全ての修正案を並べてみると、意外と必要のない修正があることにも気づくでしょう。
 ともあれ、課題を全て解決し、実際に行なう修正の方針を固めてください。
 そしてこれまでの推敲作業と同様に、必要な情報を本文の該当箇所に並べます。さらに頭から文章を直していってください。
 
 この作業により、例えば第三話から第二話と第一話に向けて伏線を張るような逆行作業も、無理なく実現することができるようになります。

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